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「いやー、秋月が来てくれて助かったわ。今日のご飯どうしよーって思ってたんだよね」
「……キッチン綺麗だったけど、今までどうしてたの?」
「それはー……分かるよな、秋月くん」
これまで淡々として表情に変化があまり見られなかった秋月がから、ふぅ、と小さくため息がこぼれた気がする。
姉を心配してか呆れてかいざ知らず、案外彼も姉に振り回される弟なのかもしれないと思った。
「ところで市原……さん」
「はい?」
「今日の夕飯はカレーなんですよね。良かったらうちで食べていきませんか? もう作り終えたので」
「えっ! 悪いよ! ていうかなんで知ってるの?」
どうやら、夕飯の献立を考えている時、疲れて頭が少しショートしかけていて、ぶつぶつ独り言をこぼしていたらしい。それに便乗して秋月がカレーは豚肉派か鶏肉派か尋ねたらしかった。
その後、秋月を空き巣か夏月のストーカーと勘違いしてしまったが、おそらく彼はふらふらした足取りでぶつぶつと夕飯の献立を呟く瑞香を心配して、声をかけてくれたのだろう。
途端に自分の先程の失礼な態度を恥じる気持ちで、顔が熱くなる。
「あれ、ちょっと顔赤くない?」
心配そうな夏月に大丈夫と答え、いつまでもここにいて迷惑をかけられないと立ち上がろうとするが――。
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