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確かに身体はデカい課長。
……だけど、さっきの一瞬で能力値の差を思い知っただろうに。
反射神経で大きく上回っている碓氷さんが課長の攻撃を全て躱して2、3発鳩尾に拳を素早く入れてフィニッシュだった。
騒ぎに気付いて誰かが警察へ連絡してくれたらしく、パトカーの音が近付いてくる。
「一件落着」
「私の疑問はまだ解消されてませんけど」
課長の手首に手錠をかけた碓氷さんが発した言葉に、すぐさま突っかかる。
「私の部屋にどうやって入ったのか、後でゆーっくり聞かせてもらいますからね」
「……」
碓氷さんの、無表情ながらに焦った顔。
なんだかこうして見ると可愛く思えてくるな。
ずっと認めたくなかったが、彼の綺麗な見た目は無表情も相俟って彫刻のよう。
そんな彼に、結局二度も助けられちゃった。
……いや、私が気付いていないだけで、あの出会った日からずっと守ってくれていたんだ。
「碓氷さん……ありがとう」
「つばささん……それでは付き合ってくれますか?」
「それはない」
今それを言うか。折角のムードをぶち壊しやがって。“それでは”の意味を1から勉強してこい。
……なんて、終始意味不明な人だけど、ピンチの時に現れてくれた時はちょっとかっこいいなんて思っ―――いや、気のせいか。
もしかしたら、この人と付き合うのも時間の問題かもしれない。
なんて可笑しな考えが頭を過ったのだった。
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