近藤鷹男(32)フリーターが就職を決意するまで

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近藤鷹男(32)フリーターが就職を決意するまで

   ◆  コンビニのアルバイトも終わり、土曜日の午後11時30分。家賃2万5千円の1Kの部屋で、俺はPCを前に頭にヘッドホンをつけ、片手にコーヒーの入ったカップを持ちながらディスプレイを見ている。  32にもなってコンビニのアルバイト店員というのも負け組の一員のような気がしてならない。本来ならば、会社員として働いて両親に数万円程仕送りでもするのが一般的なのだろうけれど、それが出来ていない自分がいる。  俺はモチベーションを保てるかどうかで仕事を決める。だから今のアルバイトもそろそろ辞めてしまうのだろう。他の人から言わせればそれは甘えであり、実際苦労しながら家族のために働いている者はたくさんいる。  それでも自分の能力が生かせる場所で、自分がやりたいと妄信出来る仕事に就きたいと思ってしまうのがこの俺、近藤鷹男なのだから仕方がない。  人生の苦痛から逃れるように毎日、大手動画配信サイト『ヨウツベ』で様々な動画や生放送を見る。    その中でも今嵌まり込んでいるのが、悪魔結社サタニアス【公式】である。  画面の中の3Dキャラクターサタン・サタニアスは同じく3Dで作られた玉座に優雅に座り、匿名の相談に答える。  その声を例えるとするならば。乙女ゲームやアニメで活躍し、低く艶のある声の超有名声優、子安文人であろうか。 『――と、このように自分が気まずいと思っている場合、大抵相手も気まずいと思っているものだ。だからこそ正直に、「こういうの気まずいですよね」と言うことにより気持ちを共有するのがいいだろう。そうすれば相手側も心を許し話しやすくなるのではないかね?』
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