第四話

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 とっぷり、波に飲まれ水の底へ沈んでいく感覚に、ももは目を覚ました。  はあ、はあ、と荒い呼吸を繰り返し、ベッドサイドのランプを点ける。もとより置かれていた卓上時計は、朝とも夜とも言いがたい曖昧な時間を指し示していた。 「まだ、四時……」  起きるまでにはかなりの時間がある。カーテンの隙間から覗く空もまだ暗い。  何度も息を吸って、吐いて、ももは肺の狭まりに夜着のガウンをぎゅうと抱きこむ。 「さい、あく……」  まさに、双方の肺が水で満たされたような息苦しさであった。心臓がドクドクと激しく鳴り響いている。やがて呼吸を取り戻しても、それだけは治ることはない。  パリのアパルトマンは、静けさに包まれていた。車のエンジン音や、パトカーのサイレンも聞こえない。夜明け前にやっと街が眠りについたらしい。 「さむ……」  その静けさが、朝の冷え込みをいっそう強くする。秋の声はもうすでに、彼女の耳の裏を撫でていた。 「もう少し眠れるかしら」  布団に潜り込んで、空っぽのお腹に触れる。夜着越しに、冷たさが伝播(でんぱ)して体が震えた。  ももは必死に太陽を思い浮かべながら、まぶたを閉じた。
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