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 森の部屋には先客がいて──それは羽柴ではなかった──ドアを開けたおれに向かって下品な口笛を吹いた上級生が目に入った途端、やられたと思った。立ち尽くすおれの背中を森が押した。先輩が三人と、同じクラスだけど一度も話したことのない、あぁでも森が教室に来た時に話してるのを見たことがある。確か高橋って名前の男──ご多分に漏れず森や先輩達と同じ部活動に所属している──を前に、緊張したような声で「連れてきました」と言ったのが、その日最後に聞いた森の声だった。 『女より良さそうって言われてるの、知ってるか? こんな細っこくてナマッちろいツラしてたら、いつ喰われてもおかしくない。他の部の三年だっておまえを狙ってる』  いまどき安っぽいアダルトビデオでも使わないようなボールギャグを咥えさせられたおれの上に馬乗りになった主将は、いたいけな後輩に向かって舌なめずりするように言った。「バレないように、しないとな」と鼻歌でも歌うように言いながら制服を一枚ずつはがし、自分のベルトをゆるめた。  三年生の中にも上下関係があるらしく、おれを犯していいのは主将だけだった。他の二人の先輩は最初こそ頭や肩を押さえつけていたが、おれがどうやら抵抗しなくなったのを見て、主将に「いいからあっちで見てろ」と厳命され、見張りとして部屋の外に出された森と高橋同様、傍観者へ降格。が、二回続けて射精した後に主将の気が変わったのか、つい今しがたぞんざいに扱ったばかりの同級生を呼び戻し、そいつらの前でもう一度おれに跨った。見られることで興奮する性癖の持ち主だったらしい。それとも、そんな昏い悦びにこの時目覚めたのかもしれない。お前らにはやらせないけど、そこで見ながら抜いてもいいぜと何を気取っているのか妙な調子で言った。  主将とかいう呼び名の獣がおれの中に突っ込んで、ああとかいいとか、生まれたばかりの赤ん坊にも劣る知能の低さしか持ち合わせていないことを証明するのに十分な声を上げる。その獣が本能をむき出しにする様を、どいつもこいつもが指を咥えて眺めながら、溜まりに溜まった汗と欲望を突き破るように股間を膨らませていた。  あの時よりはマシだ。  おれはずっと念じるように心の中で繰り返した。
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