私は虫です

　私は黒い羽に長い触覚を持ったゴキブリです。油で黒光りする身体は艶々で私自身はカッコいいんじゃないかと自負しており、こういうのも何ですけれど、男前だと思っているのですが。やはりゴキブリなので人間には嫌われています。この前も家の家族が寝静まった隙に壁の隙間からキッチンへ行ったら運悪くお父さんが水を飲みに起きて来て、私をスリッパで叩こうとしました。何故そんなに嫌うのでしょう。私は人間に対して攻撃をした覚えもないし、ひっそりと上手く暮らしているつもりです。たまにお腹が空いて昼間にガサガサとしますが、それでも立場をわきまえてお母さんやお父さん、子供たちが来たらその場を譲って壁の隙間に逃げ込みます。

　お父さんは市役所で働いています。朝６時に起きてきて、毎日のように納豆でご飯を食べ、７時には家を出ます。お母さんはパートで検査の仕事をしてるようです。子供２人は小学生で綾乃ちゃんと美咲ちゃんといいます。３歳違いの２人はよく似ていて色が白く、白い歯が綺麗に整った可愛らしい女の子たちです。私は２人のうちでも美咲ちゃんが好きです。妻や恋人のいない私は美咲ちゃんを思うと胸が高鳴り顔が火照って首のあたりがバクバクします。美咲ちゃんは小学６年生です。