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ありがとう。でも……
「愛してるんだ」
「……ありがとう。でも、ごめんなさい。私、竜輝を連れて出ていく。早くそうしなければいけなかった」
琳香は隆哉にうっかり抱きしめられるようなスキを見せてしまったことを反省した。でも、どこかでこうなることがわかっていて招いたのかもしれないとも思っていた。
「兄貴がこの川で他人の子を助けて死んで、7回忌も済んだ。竜輝ももうすぐ10歳になるから兄貴とより俺との方が長くなった。もう俺と一緒に生きているのと同じなんじゃないか。だから……」
琳香は隆哉の温もりと鼓動を感じながら、この腕を彼自ら解かせる言葉を探していた。
「隆ちゃんは義弟だから。竜嗣が私たちを置いて死んでしまった時、私は利用できるものは利用しようと。お義父さんもお義母さんもよくしてくれるのを幸いと甘えることにしたのよ。私は変わらず働いて、竜輝がある程度大きくなるまでお世話になって、お金が貯まったら出ていこうと。あの子と二人で暮らすために」
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