ハムスターばいばい 第4話

3/11
前へ
/37ページ
次へ
二人はその後も言い争い、もう出ていく、出ていかない、別れる、別れないを繰り返していた。そして 「じゃあ、本当に帰ってこないからな」と言い、パパが出ていった。  見てはいないけれど、玄関からパパが出ていく音がした。そんなに激しい音ではなかった。出ていったというより、消えてしまった感じがした。一瞬の静寂はママの泣き声でかき消された。  そこから二度と私は、パパと会うことはなかった。 ***  カレンダーは1月14日。  ママはパパがいなくなってからお酒ばかり飲んで茶色の髪がボサボサになっている。飲んだ缶は片付けないでテーブルや床に散乱している。まだ中身が入っていたり、つぶしてあるものもあった。ママはきれい好きだったはずなのに。今のママは部屋も私も奈々のことも見えてない。ボロボロだ。  携帯電話を頻繁に手にとってチェックしている。パパからの連絡を待っているんだ。  奈々は、パパとママのことも知らずに、よだれを垂らして呑気に眠っている。夫婦喧嘩が理解できないのだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加