ハムスターばいばい 第1話

9/9
前へ
/37ページ
次へ
 目を覚ますと、部屋が薄暗くなっていた。夕方になっていたのだ。誰もいないキッチン、誰もいないリビング。暗い窓の向こうでは、町内放送の夕焼け小焼けが流れている。私はその光景に、ぞっとする。不安がこみあげ、何かを確かめるように自分の頬を触った。  すると、ぬるりとした感覚がした。ふと自分の手を見ると、指先が赤い液体で濡れている。  これは血だ。しかし、私の血では無い。獣のにおいがするのだ。 「ん?」  嫌な予感がして、ケージの中のおもちゃや家を全て出してみた。 車輪の下に、口から血を吐いて圧死しているハムスターがいた。 身体のちょうど半分の場所が、極端に細くなって紫色に変色し、口と肛門から塩辛みたいなものが飛び出している。 「んん?」 指でハムスターの頭をつまんで出して、ぶらぶらしてみた。ぴくりとも動かないただの小さな肉の塊になっていた。だめだ。死んじゃった。 「気持ち悪……」  私は、ハムスターをビニールに入れてゴミ箱に棄てた。  そして、すぐに違うハムスターを買いに行った。 (続く)
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加