1人が本棚に入れています
本棚に追加
目を覚ますと、部屋が薄暗くなっていた。夕方になっていたのだ。誰もいないキッチン、誰もいないリビング。暗い窓の向こうでは、町内放送の夕焼け小焼けが流れている。私はその光景に、ぞっとする。不安がこみあげ、何かを確かめるように自分の頬を触った。
すると、ぬるりとした感覚がした。ふと自分の手を見ると、指先が赤い液体で濡れている。
これは血だ。しかし、私の血では無い。獣のにおいがするのだ。
「ん?」
嫌な予感がして、ケージの中のおもちゃや家を全て出してみた。
車輪の下に、口から血を吐いて圧死しているハムスターがいた。
身体のちょうど半分の場所が、極端に細くなって紫色に変色し、口と肛門から塩辛みたいなものが飛び出している。
「んん?」
指でハムスターの頭をつまんで出して、ぶらぶらしてみた。ぴくりとも動かないただの小さな肉の塊になっていた。だめだ。死んじゃった。
「気持ち悪……」
私は、ハムスターをビニールに入れてゴミ箱に棄てた。
そして、すぐに違うハムスターを買いに行った。
(続く)
最初のコメントを投稿しよう!