確率0.1%の朝

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確率0.1%の朝

 カーテンの隙間から差し込んできた細い日差しのせいで、目が覚めた。  まだ重い瞼を薄く開く。ぼやけた視界にゆっくりと、枕、ローテーブル、カーテンの順に自室の家具が映り込んでくる。  横を向いて寝るようになったのは、彼と出会ってからだ。  いつだって心のどこかで期待してしまう。目を開きながら、もしかしたら今日は、と思ってしまう。それももう何度繰り返しただろう。  大人ふたりが並んで寝るには窮屈が過ぎるシングルベッドに横たわっているのは、今朝も私ひとりだけだ。諦めの気持ちが九割……いや、九割九分九厘。残りのたった一厘を、まだ私は殺しきれずにいる。  大人になってからの恋には、駆け引きや、打算や、条件や、そういう要素がつきものだ。  煩わしいと思うけれど、思ったからといって即座にどうにかできるものでもない。起き上がることなく、私はきつく目を閉じた。  彼は、決して私と夜を明かさない。
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