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***  ‥‥相場。この男、一体、何を考えてる?  俺と仲良くなりたい、本当にそうなのか?  常識を持っている人間なら、仲良くなりたいと思っている相手に、こんなにしつこく強引に付きまとったりはしない。  まあもしかしたら、他人との距離感を掴むのが極端に苦手な、人間関係不器用タイプという可能性もある。  ‥‥だけどあいつ、いつも変にニヤニヤ笑って、まるで俺の反応を楽しんでいるように感じる。‥‥考えすぎかもしれないが。  頬杖をつきながら先生の説明を聞いている、相場の背中を見つめる。  相場の席と俺の席は少し離れているので、相場がきちんとノートをとっているのかは分からない。しかし頭がこくん、こくんと微かに揺れているのが見える。  六時間目の授業ということもあり、みんな疲れきり、机に突っ伏して眠っている生徒も多くいる。相場も同様、眠気に襲われているようだ。  だからって転入してきた初日に居眠りだなんて、すごい度胸だな。俺からしたら、信じられない行動だ。  決して居眠りなんてしないが、しかし今日は一段と疲れた。  いつもはスッと頭に入る授業も、全く集中できない。  これも全て、相場のせいだ。  好意なのか悪意なのか分からないが、あいつが一日中ずっと俺の周りをうろつくせいで、無駄に神経を使った。  俺をこんなにイライラさせたバチがあたればいいのに。  帰り道すっ転んで、ドブにでもハマれりやがれ、相場!!!  そう心の中で叫びながら、相場の背中を睨み付けてやると、途端に相場の体がピク、と動いた。  ‥‥‥え?  相場がゆっくりと、俺の方を振り向く。  バチ、と目があった。  眠たそうな黒い瞳が、俺のことを見つめている。  ‥‥‥‥‥‥‥は???  な、なんであいつ、こっち見てるんだ。  ぶわっ、と腕に鳥肌がたった。  相場は表情を変えないまま俺を見つめている。  そして、声を出さないまま、パクパクパクと口を動かした。  『呼、ん、だ?』  そう言ったように見えた。  見間違いかもしれない。いや、でもそう見えた。呼んだ?と俺に問いかけている。そういう風に見えた。    相場の隣の席の生徒が、なに見てるの?と相場に話しかけ、同じように振り向いた。  どうしたの?なんかあった?と近くの席の生徒達が皆、あたりをキョロキョロと見回す。  相場以外の人間は俺を見ていない。俺の席の近くで、相場が何かを発見したと思い込んでいる。いや、でも確かに、相場は俺を見ている。
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