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「うわっ」 靴を脱いで家に上がったところで聞こえた声に顔を上げる。 するとちょうど奥のドアから出てきたのだろう中学生くらいの少女が、スナック菓子の袋を持ちながら口をぽかんと開けていた。 「なに、もう帰ってたの」 「うん。その人は?お兄ちゃんの友達?」 「いいから、戻れって」 ふたりのやりとり、初めて見る純の一面に俺も少し呆けて様子を眺める。 しかしすぐに挨拶だ、と思ったのに、純は俺を隠すようにして間に立ち、妹らしき少女を出てきたドアの先へ強引に押し込む。 ばたりと閉められたドアの向こうから、くぐもった声が聞こえた。 「お兄ちゃんが友達を連れてきたの初めてです」 「うるさい、そういうの言うなって」 初めて聞く口調で言い返した純は俺の手首を掴むと階段へと足を向ける。 「ごめんね、うるさくて。俺の部屋こっちだから」 見たことのなかった家族への態度にくすぐったさを感じながら、引っ張られるようにして俺は純の後をついて行った。 「お前妹いたんだな」 「まだ帰ってないと思ったんだけどなー」 純の部屋は俺の部屋よりは綺麗だった。 床に何着か服が脱ぎっぱなしになっていたけどそれを拾ってしまうと他に乱れているところは見当たらない。 落ち着いていてシンプルな部屋のベッドに並んで座り、パソコンから流れる、歌詞を聞き取ることもできない音楽を聴いている。 ベッドについていた手に手が触れる。偶然かどうかはわからないが、顔を横に向けると、どちらともなく距離を近づけた。 触れるだけの柔らかいキスをする。 「……本当は、部屋に誘うの、緊張したんだよ」 「緊張?お前が?」 「失礼だなー」 からかいの含むやりとりが終わるとすぐに沈黙が落ちる。 期待があって部屋に来たわけだがなんと切り出していいのかわからず、気まずさを感じながら純を見た。 お互いがどうしたいのか漂っている空気でお互いにわかっている俺たちは、また唇を重ねる。 俺の手のひらに触れている手がぎゅっと包んできたのと同時に、舌が差し込まれた。 「っう……んっ」 「声だしても、大丈夫、だよ」 「んんっ」 後ろから深いところを突かれて思わずシーツを握る。 抑えていた声が漏れてしまったが、大きな音量で流れている音楽が、俺の声を消した。 「はぁっ、気持ち良い、ね」 「あ、あぁっ、そこっ」 「ここ?」 「っ!」 後ろから覆いかぶさるかのようにして俺の中を擦る純に、びくっと体が震える。 下の階に家族がいる状況に初めは躊躇っていたが、お互いを求め、与えられる気持ちよさに、夢中になっていた。 「ん、ん、純っ」 「智也くんっ……智也、智也っ」 俺と同様に、純も張り詰めた気持ちを息とともに吐き出す。 お互いに同じ気持ちをぶつけ合って名前を呼んだ。 「はぁっ、あっ」 「っ、」 「んっ、んーっ」 「ん、いくっ」 積もっていた快感が弾けた俺は、大きくなってしまう声を止められずにシーツに顔を埋める。 抑えることのできなかった俺たちの声が、爽やかでどこか色気のある音楽の下に隠れた。
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