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「はぁっ」 自室のベッドに腰掛けて、熱く、硬くなっているそれに指を這わす。 何度も何度も擦っていけば、呼吸が少しずつ乱れてきた。 「っ」 そういえば、さっきのヤンキー、名前なんだろ。俺の言葉に怒っていなくなってしまった背中が頭の中に浮かぶ。 目立つ金髪、だらしないのにどこか清潔感のある雰囲気、キラリと光る耳たぶのピアス。 さっき知ったばかりの姿を思い描けば手の中のものが反応を示して、体の素直さに苦笑する。 「っ、くっ」 俺に組み敷かれたらどんな顔をするだろう。どんな声を上げるのだろう。どんな顔でいくのだろう。 脳内の俺は、その腰を抑え込み、くねらせる体へ腰を打ち付ける。 想像の中のそいつは、びくりと体を震わせる。 「はっ」 快楽に眉を寄せる顔を想像しながら、いっそう激しく擦り上げた。 どうやら俺は、あのヤンキーを求めているみたいだ。 「あ、見つけた」 和やかな春の空気にまどろみながら、ひとり屋上で心地よい風を堪能していると、後ろで声が上がった。 手すりに預けていた体をひねって、後ろを振り返る。 「昨日はどうも。俺、大月純です」 「お前か」 女受けの良さそうなふわっとした茶髪、左に泣きぼくろのあるタレ目、俺よりも少し背の高い体。 昨夜は暗がりでよく見えなかったが、大月純と名乗ったそいつは、人から好意を寄せられそうな外見をしていた。 「なんか用か?」 もう二度と会うこともないと思っていた顔が近づいてきて俺の隣に並ぶ。 「俺名乗ったんだから、そっちも名前教えてよ」 「別に必要ねぇだろ」 「冷たいなぁ、甲斐智也くん」 「知ってんじゃねぇか」 俺の言葉に何故か楽しそうに笑ったそいつは、そっちのクラスの女子に聞いた、と言った。 「ねぇ、俺もっと智也くんとお近づきになりたいな」 「俺は興味ねぇ」 「俺は興味ある」 「……相手は誰でもいいんだろ。俺じゃなくて違うやつ捕まえろよ」 「んー、前はね、誰でも良かったんだけど。今は智也くんじゃなきゃ嫌なんだよね」 「お前意味わかんねぇな」 だいたい知り合ったのは昨晩だ。それに普通の出会いでもない。 こいつ俺のことからかってるのかと思ったが、隣で俺を見る顔はいたって真面目なものだった。 「そう勘違いしてるだけだろ。今まで周りにいなかったタイプだから気になるだけだ」 「えー、違うと思う。だって俺、智也くんで抜いてるし」 「は?」 真面目な表情を崩さずに、驚きの事実が告げられる。 「お前それ本人に言うなよ……」 「だって智也くん相手してくんないから。どう?俺と気持ち良いことする気になった?」 「ならねぇよ」 冗談であってくれと思うが、そうでないことは変化のないしれっとした口調でわかってしまった。 俺の誤解から知り合っただけの男に、どうして性行為に誘われているのか、誰かに訊ねたかった。
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