05

1/1
前へ
/10ページ
次へ

05

「今の誰?あ、やっぱり誰でもいいや」 あいつのことなんか考えたくない。 蘇った楽しそうな智也くんの声に、腹の奥に嫌なものが溜まる。 不機嫌さを隠さず低い声で話す俺に、智也くんが訝しんでいるのがわかった。 そんな智也くんに手を伸ばして二の腕を掴む。そしてその体を引き寄せて、唇を智也くんのものに押し付けた。 「っ」 離れようともがく智也くんを押さえつけて離さない。 怒り、そして嫉妬に身を任せて舌で唇をこじ開けた。 噛まれるだろうかと思ったが、智也くんは舌を引っ込めただけで噛むことはしない。 なんだかんだ優しいんだよなと思いながら、掻き乱すように舌を動かした。 「ん、」 ぴちゃぴちゃと溢れるいやらしい音が耳に絡みつく。 必死になって深いキスを続ける俺は、制服の上から智也くんの腰の中心を撫でた。 そこで智也くんは腕に力を入れ、俺のことを引き剥がす。 「っ、はぁっ、なんだよ、これ」 「ごめん、俺、堪えきれないほど嫉妬してる」 俺はまた衝動に任せて、智也くんを壁に押し付ける。 強引に智也くんのベルトを外す俺に、おい、と焦った声はかけるが、何故か智也くんは俺を殴らないし突き飛ばさない。 なにかに急かされるみたいに、俺は智也くんの制服と下着をずり落とした。 「おい、大月!」 「ごめんね。でもこれで最後だから」 それに手を伸ばすと、容赦なく擦り上げる。弱々しく押される肩、短い吐息に、俺はひどく興奮した。 「俺だけ見てよ。俺じゃだめなの?」 「っ、やめろ……」 手のひらで包み、激しく動かすと智也くんは眉を寄せる。 初めて見る智也くんの感じている顔に、俺にも熱が灯る。 「さっきの子も智也くんにこんなことしたいと思ってるだろうね」 「あいつは、ただの後輩、だ……はぁっ」 「そう思ってるのは智也くんだけだよ」 荒くなってきた智也くんの息を堪能しながら手を動かし続ける。 先端を攻め立てると、びくっと体が震えた。 「そのまま、感じて」 「んっ、大月、やめろ、って」 「どうして?気持ち良いでしょ?」 「んっ、あぁっ……」 指を這わせているそれはどんどん硬くなっていく。 俺の手で、智也くんが気持ちよくなっている。智也くんが声を上げている。 自分がどんなことをしているのか、今すぐやめなければということがわかっていても、どうしてもやめられない。 「ねぇ、いきなよ、智也くん」 「ん、はぁっ」 俺の肩を押していた智也くんは、いつの間にか俺にしがみついている。 「これでいけるかな?」 「っ、それ、やめろ」 「でもここ気持ち良さそうだよ?」 「んなわけ、……っ」 手のひらで何度も刺激を繰り返す。 いきそうな智也くんを促すように耳に舌を這わせば、また体が震えた。 ねっとりと、ゆっくり舌を這わせる。 「んっ、だめだ、もうやめ、ろ、」 「いくまでやめない」 「ん、ん、」 「いきそう?」 俺の言葉に微かに頷いた智也くんに、更に手の動きを激しくする。 感じている智也くんに満たされる心、そして同時に罪悪感も感じながら、俺はごめんね、と繰り返し呟いた。 「あっ、いくっ……っ!」 「ごめん、ごめんね、好きだよ」 ぎゅうっと俺にしがみついた智也くんが果てるのを眺めながら、この気持ちを捨てることを決意した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

187人が本棚に入れています
本棚に追加