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05
「今の誰?あ、やっぱり誰でもいいや」
あいつのことなんか考えたくない。
蘇った楽しそうな智也くんの声に、腹の奥に嫌なものが溜まる。
不機嫌さを隠さず低い声で話す俺に、智也くんが訝しんでいるのがわかった。
そんな智也くんに手を伸ばして二の腕を掴む。そしてその体を引き寄せて、唇を智也くんのものに押し付けた。
「っ」
離れようともがく智也くんを押さえつけて離さない。
怒り、そして嫉妬に身を任せて舌で唇をこじ開けた。
噛まれるだろうかと思ったが、智也くんは舌を引っ込めただけで噛むことはしない。
なんだかんだ優しいんだよなと思いながら、掻き乱すように舌を動かした。
「ん、」
ぴちゃぴちゃと溢れるいやらしい音が耳に絡みつく。
必死になって深いキスを続ける俺は、制服の上から智也くんの腰の中心を撫でた。
そこで智也くんは腕に力を入れ、俺のことを引き剥がす。
「っ、はぁっ、なんだよ、これ」
「ごめん、俺、堪えきれないほど嫉妬してる」
俺はまた衝動に任せて、智也くんを壁に押し付ける。
強引に智也くんのベルトを外す俺に、おい、と焦った声はかけるが、何故か智也くんは俺を殴らないし突き飛ばさない。
なにかに急かされるみたいに、俺は智也くんの制服と下着をずり落とした。
「おい、大月!」
「ごめんね。でもこれで最後だから」
それに手を伸ばすと、容赦なく擦り上げる。弱々しく押される肩、短い吐息に、俺はひどく興奮した。
「俺だけ見てよ。俺じゃだめなの?」
「っ、やめろ……」
手のひらで包み、激しく動かすと智也くんは眉を寄せる。
初めて見る智也くんの感じている顔に、俺にも熱が灯る。
「さっきの子も智也くんにこんなことしたいと思ってるだろうね」
「あいつは、ただの後輩、だ……はぁっ」
「そう思ってるのは智也くんだけだよ」
荒くなってきた智也くんの息を堪能しながら手を動かし続ける。
先端を攻め立てると、びくっと体が震えた。
「そのまま、感じて」
「んっ、大月、やめろ、って」
「どうして?気持ち良いでしょ?」
「んっ、あぁっ……」
指を這わせているそれはどんどん硬くなっていく。
俺の手で、智也くんが気持ちよくなっている。智也くんが声を上げている。
自分がどんなことをしているのか、今すぐやめなければということがわかっていても、どうしてもやめられない。
「ねぇ、いきなよ、智也くん」
「ん、はぁっ」
俺の肩を押していた智也くんは、いつの間にか俺にしがみついている。
「これでいけるかな?」
「っ、それ、やめろ」
「でもここ気持ち良さそうだよ?」
「んなわけ、……っ」
手のひらで何度も刺激を繰り返す。
いきそうな智也くんを促すように耳に舌を這わせば、また体が震えた。
ねっとりと、ゆっくり舌を這わせる。
「んっ、だめだ、もうやめ、ろ、」
「いくまでやめない」
「ん、ん、」
「いきそう?」
俺の言葉に微かに頷いた智也くんに、更に手の動きを激しくする。
感じている智也くんに満たされる心、そして同時に罪悪感も感じながら、俺はごめんね、と繰り返し呟いた。
「あっ、いくっ……っ!」
「ごめん、ごめんね、好きだよ」
ぎゅうっと俺にしがみついた智也くんが果てるのを眺めながら、この気持ちを捨てることを決意した。
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