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頬杖をつきながら窓の外に目をやる。 すぐ外にある中庭を眺めあくびをすると、鋭い声が飛んできた。 「こら大月、真面目にやれよー」 「はぁい」 黒板の前で生徒たちを監視している教師に顔を向け、すぐに手元のプリントに視線を落とす。 白い紙には数字や計算式が並んでいた。 「終わったやつから帰っていいからなー。先生も早く帰りたいから皆頑張れよー」 「じゃあ帰らせてよ」 「プリント終わったらな。そもそも赤点をとらなかったら補習を受ける必要ないんだぞ」 えぇー、という嘆きの声を聞きながらシャーペンを手に取る。 ひとつの教室に集められた数人の生徒に混ざり、数学の補習を受けていた。 こんなに面倒ならちゃんと真面目にテストを受ければよかったな。早く智也くんに会いたいな。 今日会う約束はしていないけど連絡すれば会えるだろうか、と数学以外のことを考える。 ぼんやりしながらシャーペンをくるりと回したとき、左にある窓が少しだけ開けられた。 「まだ終わんねぇのかよ」 「智也くん?」 先生にバレないようにだろう、小声でかけられた声に左を向けば、体を屈めた智也くんが窓のすぐ外にいた。 不意に訪れた智也くんとの時間に、俺は手に取ったばかりのシャーペンを置いてにやける。 「なに、どうしたの?俺のこと待っててくれたの?」 先生にバレてないことを確認してから俺も小さな声を返す。すると智也くんは反射的にちげぇよ、と言い、すぐに、いや違うってこともねぇかと自分の言葉を否定した。 「お前が浮気してないか確認しにな」 「え?」 きっと冗談のひとつだったんだろう。けれど不意打ちの言葉に、俺の耳に熱が生まれる。 好きな子に独占欲を向けられるのは、こんなに嬉しいものなのか、と嬉しさと気恥ずかしさが胸に広がった。 「なんだよ、そんなに照れることか?」 「智也くん俺のことちゃんと好きなんだなって思って」 「……お前の言ってることのほうがよっぽど恥ずかしいだろ」 お前のそんな顔初めて見た、とこぼした智也くんにも俺の照れが移ったのか、ふたりで耳を赤く染める。 なんか恋ってくすぐったいな、なんて思いながら俺はカーテンを引っ張る。 ゆったりとしていて、けれどどこかむず痒いところが、春に似ている。 皆が数式と戦っている教室に隠れて、智也くんの薄い唇に吸い付いた。
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