お前は、二人分食べないと。(短編と内容同じです)

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   * 「食べれそうか?」 「……んー……」  せっかく作ってくれたおうどんと、さっきからにらめっこになっている。  途中までは食べたんだけど、ぱたっと箸が止まってしまった。  食べたい。けど、食べられない。  最近、何を食べても半分くらい食べたところで、なんか生臭いっていうか、生々しい匂いを感じてしまう。  一口も食べられなくなっちゃったものもある。卵焼きとか……大好きなのに。 「無理はするなよ」 「ん……ごめんね、もうお腹いっぱい……」  残りは俺が食べるから遠慮なく残すように。……って、私の残したおうどんも、ちゃんと全部食べちゃってくれる。  作ってくれるのだけでもありがたいのに、作ってやったのに食べないのかとか文句言ったりしないのが、泣きそうにありがたい。私だったら、せっかく作ったのにとか言っちゃったり、言わなくっても思っちゃったりしそうだよ。 「……ちぃは、二人分食べないと駄目なんだよなあ」  何か食える物ないかな、って、お鍋を流しに下げながら、真剣に考えてる。 「大丈夫だよ。二人分っていうの、よく言われるけど、間違いなんだって」 「そうなのか?」 「この時期の赤ちゃんなんて、豆粒みたいなものだから、食べれないときは無理しなくて良いって……生活指導の助産師さんが言ってたよ」  洗い物は私がするねって言ったら、良いからとにかく寝ててくれって言われて、またソファに横になる。  こんなにゴロゴロばっかりしてたら、食べられなくても太りそう。 「そうか。……でも、もう少し何か食べれたら良いよなあ」  過保護な夫は、大丈夫って言っても、心配みたいで。  しばらく、何か考えていた。  
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