ハーメルン

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 ある日のことだった。  風呂に沈められて気を失っていた少年は、 ドアを叩く音で目を覚ました。  親だろうか、親族だろうか。  最早条件反射のように震える体を押さえ、 ドアの方を視る。するとそこに映っているの が、親でも親族でもない形をしていることに 気づいた。  「誰?」  問えばその影はゆるゆると揺れ、音も 立てずにドアを開けた。  ……そこにいたのは、ちぐはぐの少女。 幼い顔立ちに似合わぬロングヘア、大人っぽ い服を着た18歳くらいの少女だった。  少女は少年と目を合わせると、暗い電灯に 背中を照らされながら何かをなぞるように 声を発した。
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