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「……エディ…本当のことを言って。
他に好きな人がいるの?
それとも……もう結婚してるの?」
「だから、違うって言ってるだろ!?」
エディのその顔は今までレイラが見たことのないような険しいものだった。
「……レイラ…この鐘は二人の愛を永遠のものにしてくれるって言われてるんだよ…
……残念だけど、僕は……だめなんだ。
君がこの鐘を一緒に鳴らす相手は僕じゃない…」
「だから、エディ…その理由を聞かせてほしいの!」
「レイラ……僕ね……
もうすぐいかなくちゃならないんだ。」
「……いくって…どこへ?」
エディは黙って空を見上げながら指差した。
「……どういうこと?」
レイラにはその仕草の意味が理解出来なかった。
「レイラ……僕……
先月、事故に遭ったんだ。」
「えっ!?」
「最初は事情がまるでわからなかった。
なぜだか僕の家族が悲しい顔をして病院にいて…夢を見てるのかと思ったよ。
でも、そのうちだんだんわかって来たんだ。
……思い出したんだよ。
そうだ…僕は事故にあって、車に跳ね飛ばされたんだってことを…
僕は、今、死にかけてるんだってわかったんだ…
……絶望的な気分になったよ…
まだ僕は死ぬような年じゃない。
そりゃあ、若くても死ぬ人はたくさんいるけど、僕は死を身近に感じたことなんて全くなかった。
そういう人達は気の毒な一握りの人で、僕は違うと思ってたんだね。何の根拠もなく…
だけど、そんな不幸が自分の身に降りかかった。
……いろんな後悔が胸に込み上げたよ。
中でも一番悔しかったのが、君との約束を果たせなくなったことだった。
どうにかして、最期に君に一目会いたい…!
約束の場所に行きたい!
その想いだけで僕は生にしがみついた。
そんなこと…無理なのにね…
でも、僕はいつの間にかあのもみの木の下にいた。
奇蹟が起きたんだって思ったよ。
だけど、君がここに来てくれるか…そして、こんな僕に気付いてくれるかどうかは自信がなかった。
だって、僕はいつも必死になって家族に話しかけたのに、彼らは僕には全く気付く事はなかったんだから。
なのに君は……君は、僕に気付いてくれた。
僕のことを疑う事もなかった…本当に奇蹟だと思ったよ。
きっと、最期に神様が僕に幸せをくれたんだ。」
隠していたことを話してほっとしたのか、辛いことを話したのにも関わらずエディの表情はいつもの穏やかなものに戻っていた。
「嘘……そんなこと……信じられない……」
「残念だけど…とても辛い事だけど…本当のことなんだ。」
レイラはエディの前に立ち尽くし、黙ったまま涙を流した。
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