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照れくさかったのか、頬を赤くした武治は、笑ったまま目線をあちこち泳がせた。
やがて、優香の胸元に下がったペンダントに目を止めた。
「そのペンダント、いつもつけているね」
武治の言葉に、優香は自分の胸元に目を向けた。
薄紫色の少し歪な石をトップにし、金属製のチェーンがつけられている。
チェーンは光の角度によって、黒真珠のような輝きを見せてくれる。
控え目で普段使いするのに丁度良かった。
「これ、幼馴染に貰ったの」
優香ちゃんを守ってくれる。
手渡してくれる時、彼女はそう言っていた。だから、彼女はいつもそれを身に着けていた。
「千代ちゃんって言うのよ」
「仲、良かったんだ」
「だって、幼馴染だもの。ずっと一緒だったわ」
「へえ。君のそう言う話、あんまり聞いたことないね」
「苦手なのよ」
何となくくすぐったい感じがして、優香は少し身を捩った。
「その幼馴染の話、聞かせてよ。飛行機がつくまではまだあるし。持ってきた本も読んじゃった」
「……分かった」
優香は一つため息をついて、苦笑いしながらそう言った。
気は進まなかったが、今回の旅行で頑張ってくれた武治の希望に沿いたい、と思ってしまったのだ。
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