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千代は相変わらず休みがちだったが、見舞いに足繁く向かうことは無くなった。
中学二年になったある日の事だ。
朝練に行くため家を出たところで、背中に冷たいものを感じた。
驚いて振り返るが、背後には誰もいなかった。
だが次の瞬間、優香は心臓が止まるかと思うほど驚いた。
二階にある窓から、千代がじっと優香の事を見ていたのだ。
相変わらず色白で、すっかり頬がこけていた。ずっと寝ているからか黒い髪は乱れていて、それが不気味さに拍車をかけていた。
千代は優香と目が合っても、その視線を逸らす事は無かった。
全身から冷たいものが噴き出す思いをしながら、朝練に行くため優香は千代に背を向けて走り出した。 その場から早く逃げ出したかったのだ。
それ以来、優香の足は千代の家からどんどん遠のいて行った。
何度か千代の見舞いに行こうとしたが、その度に亜の冷たい目が思い起こされて足がすくむのだ。
結局、中学を卒業するまで、千代の家にはいかなかった。
家を出るときにも、二度と千代の家の方は向かなかった。
何度かゾクリとしたことはあったが、決して振り向きはしなかった。
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