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そして土曜日。
優香は千代が入院しているという総合病院にやって来た。
教えられた病室に行き、ドアをノックする。
「どうぞ……」
弱々しい声に迎えられ、優香は病室へと足を踏み入れた。
廊下から一歩入っただけだというのに、空気が重たく感じられた。
どことなく息苦しいのを顔に出さないようにしつつ、奥へと進む。
そこにはベッドの上で上半身を起こした千代が待っていた。
白いというより青白く、もともと細身だった体は肉が削げてガリガリに痩せていた。
頬はコケ、目の下にはクマまでできている。
その中にあって、目だけはしっかりと優香を見ていた。
「千代ちゃん……」
「久し振りだね」
「うん」
「なんか、綺麗になったね」
「そ、そんな事……」
千代ちゃんも変わらない、とはさすがに言えなかった。
その姿を見ただけで優香の胸は締め付けられる思いだった。
「そこに椅子があるから、座って」
「あ、ありがとう」
ベッドの脇にあった椅子に、勧められるまま腰を下ろす。
見つめ合ったまま少し黙っている時間があって、それから先に口を開いたのは優香だった。
「これ、青花堂のケーキ……」
「わあ、ありがとう。後で頂くから、そこに置いておいて」
言われるまま、ベッド脇の小さな棚の上に箱を置く。
その時、同じ棚の上にあった本に目が留まる。
おまじないだとか、パワーストーンだとか、魔術だとか、そんな本が何冊か置かれていた。
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