千代ちゃんの贈り物

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 どうしてこんな友人を自分は何年も放っておいたのだろう。 「どうかしら?」  照れながら振り返り、千代に胸元を見せる。 「良く似合ってるわ。思った通り。その石はね、優香ちゃんを守ってくれるの」  千代は嬉しそうに笑ったが、その笑みも優香には弱々しく見えた。 「今度一緒に遊ぶときは、きっとこれをつけて行くから」 「ええ。楽しみにしているわ」 「じゃあ、指切り」 「ええ」  千代の細い指が優香の指に絡みつく。乾燥した病院の空気のせいか、あるいは千代の体を蝕む病のせいか、白いその指の表面はガサガサに荒れていた。 「楽しみに、してるからね」  優香が言うと、千代は頷いた。 「ねえ、優香ちゃん」  指を絡めたまま、千代は優香を真っ直ぐに見て口を開いた。 「私がいなくても、幸せになってね」 「そんな。千代ちゃんがいないと、私幸せになんて……」 「大丈夫。その石が優香ちゃんを守ってくれる。きっと、幸せの天辺まで連れて行ってくれるよ」  その言葉を聞いた時、優香は何かに巻き付かれるような感覚を一瞬覚えた。だがそれは一瞬の事で、後には何もなかった。 「どうしたの?」 「ううん、なんでも……」  千代は指を解き、ベッドの背もたれに体を預けた。 「ごめんね、少し疲れちゃった」 「大丈夫? 看護師さん呼ぶ?」 「大丈夫よ。でも、ちょっと横になろうかな」 「じゃあ、私もそろそろ帰るね」  長居して千代に負担をかけさせたくなかったのだ。 「来てくれて嬉しかった。ありがとう」 「それじゃ、またね」   優香はそう言って、千代が横になって目を閉じるのを見届けてから病室を出た。
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