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千代ちゃんの贈り物
西の空がほんのりと夕焼けに染まるころ、柴田優香とその家族を乗せた飛行機はゆっくりと飛行場を飛び立った。初めての家族旅行も間もなく終わる。
夜、飛行機は地元の空港に到着する。リムジンバスに乗り、家の近所でおろして貰ったらいよいよ旅行は終わり。
そして、明日からはまた普通の日々か始まる。明日の朝、子供達もそうだが、自分が起きられるだろうか、というのが唯一の心配事だった。散々遊びまわった小さな怪獣は、疲れ果てて今はすうすうと寝息を立てている。
「素敵な旅行だったわね」
胸元のペンダントをいじりながら、優香は子供の向こう側にいる夫の武治に話しかけた。
「そうだね。この子も楽しそうだったし」
武治はそう言って小さく笑った。
人の良さそうなふくよかな顔にも、疲れの色は見えている。
この旅行の間、武治は普段接する時間が少ないから、と子供達の相手を全力でしていた。それがそこそこ体に来ているのでは、と優香は心配をしていた。
「明日も有休とった方が良かったんじゃない?」
「ははは。大丈夫だよ。そうそう休んじゃいられない。次の家族旅行に向けて、またバリバリ働かなきゃ」
そう言って、ぷよぷよの腕に力こぶを作って見せる。
「まあ、頼もしい。でも、無理はしないでね」
そう言って優香は笑った。
実際、優香の目にはその腕がどんなマッチョマンの腕よりも逞しく見えた。
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