止揚-アウフヘーべン-

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 巡は小さいころからよくしゃべり、そこら中を走り回っているような子どもで、小学生くらいまでは一緒によく遊んでいたが、私が中学に上がったくらいからパタリとつるまなくなった。 「思春期だから仕方ないと思うけど、たまには巡もかまってやってね」 と母から言われたことがある。私は巡を避けているつもりはないし、巡も同じだと思う。自然の流れのような気がした。  高校に上がるとそれはますます顕著になった。私はこの辺りでは一番の進学校に入学した。なぜか昔から勉強だけはよくできたのだ。巡みたいに社交的じゃない分、友達に割く時間を勉強に費やした。  そんな私にも高校で趣味と友達ができた。バンドのボーカルに誘われたのだ。楽器は何もできないが、選択音楽の授業で私の歌声を聞いた男の子が誘ってきてくれた。歌うことは好きだったので試しにやらせてもらっていたが、思いの外楽しくて正式メンバーになった。  私以外は全員男子で、ドラムの男の子は私みたいに物静かだったが、ギターとベースの男の子たちはいつもキャッキャと賑やかで巡を思い出して、見ていて微笑ましかった。小学生からの同級生らしい。
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