週末はふたりきりです

8/162

2473人が本棚に入れています
本棚に追加
/401ページ
 いや、自宅はわりと二個目の部屋みたいな小洒落た造りなのだが。  家族はみんな海外を飛び回っていたり、逃亡していたり、道場に(かくま)われていたりして住んでいないので、あそこもなんだかホテルか、ちょっと覗いてみたモデルハウスみたいな感じで、我が家という感じがしないしな、と思う。 「えーと……  落ち着くのはこっちですかね?」 と夏菜は無垢材で統一された、だだっ広い部屋を選んだ。 「わかった。  黒木」 と有生が住所を言うと、はい、と黒木が頷く。 「必要最低限の家具や家電はあるようだが、まあ、なにかいるものがあったら買いに行こう」  有生が買ってくれると言う。 「いっ、いえいえっ。  あのっ、それでしたら、おじい様からお金を預かっているので」 と夏菜はお金が入っているキャリーバッグのあるトランクを振り返った。  使うつもりはなかったが、社長に払わせるのも悪いから、とりあえず、あのお金をお借りしよう、と思って言うと、 「別にいい。  それくらい買ってやる。  しばらく住むんだから、家具でもなんでもお前の好きな感じに変えていいぞ」 と言われた。  ……どうしましょう。  なんだかわくわくして来ましたよ、と思っているうちに、車は、そのマンションに着いていた。
/401ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2473人が本棚に入れています
本棚に追加