生と死の狭間

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それでも親がいないから寂しくてたまらないとか、毎日泣いていたという記憶は私にはない。 おそらく物心ついた時から施設にいたせいで、親がいないことへの感情の持ち方 自体が分からなかったのだと思う。 私にとって、施設が家であり、施設の職員さんや仲間と過ごすという事が当たり前であり、今、考えると意外と冷静に現実を受け止めていたのかもしれない。 ただ時折、形のない不安感に襲われ、自分の存在が消えてしまいそうな孤独に震えた。 親の愛情を受けたことがないという空虚感に、押しつぶされそうな感覚と息苦しさ。 (お母さんは、何で私を産んだのだろう) (お父さんは私を知っているのだろうか) (何で私は捨てられたのだろう)
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