生と死の狭間

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私は赤ちゃんの時に親に捨てられたけど、 中には、親に手を引かれ連れてこられた子もいる。 「迎えに来るから」 と言った母親の言葉を信じて、何年も待ち続けている子もいる。 みんな、違う苦悩を抱え毎日を必死に生きていた。 そんな仲間たちと毎朝、共に目覚め、そして共に眠りにつく生活。 学校に行く時も帰る時も、施設の仲間と一緒に過ごした。 そんな日々の中で、普通の家から通う子供達との違いを嫌でも感じる時間……それは、運動会とか発表会などの親が参加する学校の行事だった。 親のいない私達がさみしい思いをしないようにと、行事の時は施設の職員さんが親代わりに来てくれた。 授業中、そっと後ろを振り向くと見慣れた職員さんが優しく微笑んで手をふってくれた。 恥ずかしさと嬉しさで、すばやく前を向いていたことを思い出す。 本当の親じゃなくても自分を見守ってくれる大人がいることで、自分の存在を確認する事が出来て安心出来ていたのだと思う。
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