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妻の遺影に手を合わせる。 「今朝は目覚ましを10分早くセットしたよ。そしたら、こうして慌てずに準備出来たよ」 朝起こしてくれる君はもう居ないから、私は目覚ましで起きるようにしたけれど、起きられない事が多かった。 君が毎朝見捨てずに、根気よく起こしてくれた事を、今更ながら感謝している。 そうそう、お弁当も悪戦苦闘しながら、自分で作るようになった。作ってみると、面白いことに、遊び心がむくむくと顔を出して、タコさんウインナーや、カニさんウインナーを作ってしまっている自分がいた。 君もこんな気持ちだったのだろうか。 私は失くしてから気付いた大馬鹿者だけど、特別で貴重な幸せな毎日が、当たり前ではないものだと気付けて良かった。 君への想いと感謝の気持ちに、気付けて良かった。 君は私の手の届かない、遠くへ行ってしまったけれど、私の心の中にはいつでも笑顔の君がいるから。 「じゃあ、行ってきます。今日は帰りに、カナコの好きなケーキを買ってくるよ」 『わぁ!楽しみ!』 そんな喜ぶ声が聞こえた気がした。
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