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会社での昼休み 私はいつもの様に、妻の作った弁当を取り出して、その蓋を開けた。 今日は、玉子焼きを斜めに切って、ハートの形になるように組み合わせたものや、タコさんウィンナーなんかが入っていた。 「こういうのはやめろと言ったのに…」 私たち夫婦には子供がいない。 だからなのか、単に妻の趣味なのか、妻は私の弁当に、頻繁に可愛らしいひと手間を加えてくる。 「だって毎日同じように作っていると、飽きてしまうから。食べる方も楽しいでしょ?」 そんなことも言っていたけれど、若くもない私が、こんな子供の弁当みたいなの、見られたら恥ずかしいじゃないか。それに、どんな形でも味が変わるわけでもないし。 だけど、そんな子供っぽさを除けば、妻の作る弁当は、必ず私の好物が入っていて、なんとなく強く文句を言えなかった。 それに、どんなに酷い喧嘩をした日でも、妻は変わらずに、私の好物入りの弁当を作った。まぁ、弁当を作るのも妻の仕事のひとつではあるから、当たり前と言えば当たり前か。 朝はあんな事を言ったけど、帰りにスーパーへ寄って牛乳を買っていってやるか… 私は食べ終わった弁当箱を片付けながら、朝の発言を少し反省して、そんな事を思ったのだった。
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