ヒナの正体

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「ヒナって、朝比奈さん!?」 「はい。社内では、短くヒナって呼ばれてますよ。 敦さんから寝てる間、頭にヒヨコを入れられてから、そうなったっす。ヒドイですよねー。」  確かに茶色いモジャモジャ頭は、小鳥の巣のようだ。 「仕事中、いつも堂々と寝てるおまえが悪いだろー。」 「まだまだ成長期で眠いんすよ~。だって俺、ヒナなんで。」  二人は、楽しそうに軽口をたたきあっている。  ヒナの正体を知り、昨夜からの疲労が一気に押し寄せた。  しかし、朝比奈さんが帰り際、お騒がせしたお詫びにと、私に耳打ちしてくれた言葉で、すぐにテンションが跳ね上がる。 「最近、残業が多いのは、あかりさんの薬指のためって聞いてるっすよ!」  昇りかけていた太陽は、いつのまにか完全に顔を出していた。
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