ヒナの正体

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 二ヶ月ほど前、餌やりができる動物公園にデートへ行ったときのことだ。  敦が、羊毛で編んだ可愛らしいヒヨコのマスコットを買っていたのだ。 彼はいつも、お土産といえば食べ物しか買わないので、とても印象的だった。 「ねぇ、さっき買ってたヒヨコって、どこに飾るの?」 後で私にくれるのかと思っていたら、なかなか渡されないので、さりげなく尋ねてみた。 「あぁ。あの土産は、会社の後輩用だよ。ぴったりなのがいるんだ。」と、その人を思い浮かべたようで、敦は楽しそうに微笑んだ。  あの時すぐに、その後輩の素性を確認しておかなかったことが、今になって悔やまれる。  敦が買ったヒヨコが写された画像が、着信のあった「ヒナ」のアイコンだったのだ。  手作りの一品ものだったので、偶然同じものだとは考えづらい。
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