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「急いでタクシーで帰ったのに、家にいないから心配した。あかりのスマホ、電源入ってないし・・・。」
そういえば、一人で夜中待つのが寂しくて、音楽をかけっぱなしにしていたため、電池の残量は少なかった。
この橋へ着く途中に、切れたのだろう。
でも、スマホがつながらなかったのは、敦だって同じだよって、私は心の中で呟いた。
言葉にしたら、この居心地の良い腕の中から、出なければいけなくなるような気がして・・・。
様々な思いが交錯し、敦を抱き締め返せない私は、もて余した拳を握り、顔を上げる。
すると敦の頭越しに、対岸の山影から朝陽が昇ろうとしているのが見えた。
キレイ・・・。あたたかな腕と光に包まれ、自分の複雑に絡まった心が、ゆっくりとほぐれていくのがわかる。
その時、カシャっとシャッターを切ったような音がした。
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