前篇

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少し遅れて現れた鳥羽さんと、連れ立って歩く。 大股で歩く彼の後を距離を置いて歩きながら、時々小走りで追いかけた。 目に入った会社近くのカウンターバーで、隣り合って腰を下ろす。 オーダーした最初の一杯を思わずひと息に飲み干すと、憧れだった彼と飲んでいるという状況がただただ緊張感を呼び起こして、そこから増えていくグラスが止まらなくなった。 「……飲みすぎじゃないのか?」 鳥羽さんにそう声をかけられて、確かにそろそろ飲むのをやめないといけないのかもしれないと感じた。 けれど、横でカチリとライターを開ける金属音がして、 そのしなやかな指先で摘まんだ煙草から、紫煙がたなびくのを目にしたら、どうにもまた胸が高ぶってきて飲むのを抑えられなくなった。 「……どうして、そんなに手が綺麗なんです?」 酔って、あまり意識もなくぼんやりと呟いた。 「えっ?」と、聞き返されて、心の中で言ったつもりが声に出てしまっていたんだと思ったら、 「……その手で触られたら、気持ち良さそうだなって感じて……」 隠していた気持ちが、まわる酔いとともに口をついた──。
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