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まだふらふらと覚束(おぼつか)ない足取りで、ベランダへ向かうと、 そこには手すりに両手をかけ、煙草を吹かしているワイシャツ姿の広い背中があった。 「鳥羽さん…」 後ろから呼びかけると、 「ああ、起きたのか?」 と、顔を振り返らせて、 「よく眠ってたな…」 煙をふぅーっとひと息に吹き出した。 「あの…すいません。酔っぱらって寝るとか……」 腰を折り曲げて頭を下げると、 「別にいいって。おまえも、もういい加減、謝るなよ」 タバコを一旦口から離して言い、 「会社で借りてもらってる部屋が近くなんで、連れてきただけだしな…」 と、また吸い口を唇へ咥えた。
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