前篇

17/34
前へ
/57ページ
次へ
帰ろうとして、ふとまた煙草を吸う手の仕草に目が惹き付けられた。 視線に気づいたのか、一瞬の間があって── 吸い差しを消し、ちらりとこちらを見た鳥羽さんが、 「……好きなのか?」 と、ふいに訊いてきた。 「……えっ?」と、思わず聞き返す。 聞き間違いでなければ、『好きなのか?』と尋ねられた気がした。 「……好きなのか? 俺の手が」 そう付け足した鳥羽さんに、じっと手ばかりを見ていたことに気づき目を逸らした。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

449人が本棚に入れています
本棚に追加