前篇

18/34
前へ
/57ページ
次へ
「目、逸らさなくてもいいだろう?」 強く腕が引っ張られ、彼の顔が目前に迫る。 「あっ、え…?」 言葉に詰まり、呆然とその顔を見上げるのに、 「……好きなんだよな?」 確信めいた聞き方に言い直すと、 「……この手(・・・)で、触られたいって言ってただろ」 まさか、自分は酔ってそんなことを口走っていたのかと、恥ずかしくも感じていると、 唐突に赤らむ頬が片手で捕らえられ、ベランダの鉄柵に力ずくで押さえ付けられた。 身体が仰け反り、「落ちる…!」と思った瞬間、 片腕にぐいっと腰が抱かれ、唇が荒々しい激しさで重ね合わされた──。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

449人が本棚に入れています
本棚に追加