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「あの……、」 言いかけて、一旦口をつぐんで、 「…………もうバレてるようなんで、言いますが、」 両手をグッと拳に握り締めて、自身を奮い立たせて、 「……あなたのことが、ずっと……その、好きでした……」 思い切って気持ちを告げた。 「そうか、なんて言うか、ありがとうな。……でもなんで、"でした"って過去形なんだよ?」 キスをした後で、今になってという感もあるのか、鳥羽さんは当たり前のことのように告白を受け入れた。 「……それはその、鳥羽さんは本社に帰ってしまう人だから……」 ぼそぼそと言うのに、 「帰らないよ」 と、一言が返された。 「えっ…でも……」と、背後の部屋の中を振り返る。 そこは殺風景な程に片付いていて、いつでも帰れるようにしている雰囲気にも感じられた。
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