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「とば…さん…」 そういう名前なのかとふと口にすると、 「鳥羽さん、お知り合いですか?」 と、彼のことを呼びに来たついでに一服をしていた男性から、そう話しかけられた。 「……いえ、課も違いますし、知り合いというわけでは……たまにここで会うだけで、」 煙草を口から離して言うと、 「そうなんですか。鳥の羽で鳥羽さん、鳥羽 佳甫(けいすけ)チーフですよ。彼は、本社から出向で来てるんで、まぁ知らなくてもしょうがないかもしれないですけど」 煙を吐き出して、その男性は応えた。 「出向って、福岡からですか?」 「ええ、新しいプロジェクトチームのチーフとして呼ばれたんですが、たぶんプロジェクトが終わればまた博多の本社に帰るんじゃないですかね」 その答えに、帰ってしまうんだ……と、感じた。
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