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此処の本社は、会社を立ち上げた当初の福岡の博多にあり、自分が勤めているのは関東への進出と共に設けられた東京の支社だった。 「……では、お先に失礼します」 まだ煙草を吸い切ってはいない男の方へ形ばかりの挨拶をして、喫煙スペースを出た。 ……自分の席に戻りながら、 (帰ってしまうのか……) また、ぼんやりと感じる。 福岡に帰ってしまったら、もう二度とあの人とは会えなくなるのかもしれない。 今まではただ彼を見ていられればいいくらいに思っていたけれど、それもじきにできなくなってしまうのなら、 今度会ったら、自分から声ぐらいはかけてみようかと思った……。
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