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──シャワーを上がり、タバコの箱を手にベランダへ出る彼の背中を追った。
吸い差しを咥え、鉄柵に手をダラリと垂らした鳥羽さんが、ふぅっと煙を吐く。
濡れてぼさぼさな髪と、肩に掛けられたタオルの気負いのない雰囲気が、
俺に気を許してくれているように思えて、それだけで嬉しくなってきてしまう。
顔がついにやけていると、
「…何、ニヤついてんだよ?」と、ほっぺたがギュッと摘ままれた。
「……いっつ…」
痛みに顔をしかめると、ふっ…と鼻先で鳥羽さんが笑って、
「まさか、おまえみたいなのに好かれるとは、思わなかったがな…」
そう言うのに、「……おまえみたいなのって、何ですか…」ちょっと口を尖らせると、すかさずそこへ鳥羽さんがいつも吸っているタバコが突っ込まれた。
「……おまえみたいに、わかりやすいのだよ、ガキ」
「……ガキじゃ、ないです……」
もう何度目かの同じ会話を繰り返す。
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