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「すいませんって、こないだも言ってたよな?」 カチッとライターの蓋を閉じて言うのに、 「あっ、すいませんっ……」 再び同じ言葉が口をついて、 「ふん……」と、鼻の先で笑われた。 「自覚があるのかどうかは知らないが、すいませんって、あんまり謝りすぎるのも考えものだな…」 言って、牽制するように胸をトン…と拳で突かれた。 「あっ、えっと……」 言葉を失うのに、彼は携帯灰皿に吸い殻を押し込むと、 「じゃあ…な」と、屋上を出て行った。 その背中を見送ると、 もっと近付きたいのに、近寄りがたいもどかしさを感じるようだった……。
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