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あの人と、一度ちゃんと話がしてみたい──そう思いながらも、なかなかその機会は作れずにいた。
こないだ付き合いベタな性格を軽く諌められたこともあり、接し方がわからなくなっているようなところもあった。
ただ、このままでいても彼との距離は少しも縮まらないと、こんな性格を直していくためにも自分から前に踏み出さなければとも感じていた……。
──そんな折り、一人で煙草を吸っていたところへ、ふらりと入って来た姿に目をやると、あの人だった。
「……どうも、」
訪れた好機に緊張が隠せないまま、それだけをポツっと口にする。
「ああ、いつも会うな?」
微笑んで返された言葉に、「ええ…」と応えたきり、次に何を話せばいいのかがわからなくなる。
「あの……」
とにかく何か話しかけないとと、焦って呼びかけると、
「……ん?」
と、こちらへ顔が向けられた。
長くしなやかな二本の指に挟まれた煙草から、ゆらゆらと細い白煙がたなびいて揺れていた。
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