前篇

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綺麗な手だな……。 あの人……俺よりは、だいぶ年上なんだろうか。 会社内の喫煙スペースで、煙草を吸う男性の手指をじっと見つめていた。 一本を吸い終わり、スーツの胸ポケットから出した紙箱をトントンと指の先で叩いて、もう一本を摘まんで引き出す。 シュボ…という音と共に、オイルライターを灯し、口に咥えた先端に火を点ける。 口元からゆらりと立ち上る煙につい目を奪われていると、 「……何か?」 と、その(ひと)から視線を向けられた。
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