11人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
百円ハグ
夕暮れ時の駅に続く道。
表通りから一本入ったところにある道は、人通りもまばらだ。
トモエはそこに立っていた。
「百円ハグ、いかがっすかー」
長方形に切った段ボールに「百円ハグ」と書いたものを手で持ちながら、彼女はやる気なさげにそう繰り返していた。
「百円っすよー。こんな小柄な娘っ子とハグできるチャンス、なかなか無いっスよー」
確かに彼女は背が低かった。
百五十あるかないかぐらいだろうか。
顔だちは可愛らしいが、その目にはあまり輝きが無い。右の頬に小さな赤いハートが描かれていた。ペイントなのかタトゥーなのか、薄暗くなり始めた今は一見すると分からない。
もう日は傾き、時刻は夕方になりつつあった。
最初のコメントを投稿しよう!