こころの冒険

お買い物

　私もまた店の側まで歩いた。店内では店主の奥さんが娘と話をしている。近づきすぎるのもどうかな。そう思ったけれど、やはり気になってしまう。
　そっと中を覗き見ようとした時、奥さんと目が合った。
　しまったと思った。奥さんに"あら…"なんて声をかけられたらココロに気づかれてしまう。どうしようかと視線を泳がせたとき、奥さんは笑みを浮かべた。

　私もまた申し訳なさそうに小さく会釈すると、彼女はわかっていると言わんばかりの表情で私を見た。察しの良い人でよかった…。そう胸中で呟くと、奥さんの視線がココロに向いた。
　ココロはどうやら、ケーキを選ぶことに夢中みたい。私はまあ何でもいいのだけど、あの人の好きなケーキは、モンブランかちょっと苦めのチョコレートケーキ。これはココロも知っているはずだよね。何に悩んでいるのかな。

　ココロは視線を上げて、奥さんと何かを話している。奥さんは商品を指さしながら説明しているみたい。
　やがて奥さんは、モンブランケーキと、イチゴのショートケーキ、季節のフルーツケーキを箱に詰めてカウンターの上に置いた。
　さて、ココロはきちんとお買い物ができるかな。