最初の関門

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 ココロの視線の先には表札があった。確かここは犬養さんの家。名前の通り大きなブルドッグを飼っていて、私も何度か唸られたことがある。あれは大人の目から見ても怖い。  その猛獣のような声が聞こえてこないということは散歩中なのかな。娘が通り過ぎた後で私も敷地を見ると、犬小屋にその姿はなかった。  そのままココロの後をついていくと、彼女は振り返ることもなく100メートルほどを歩いた。この様子だと、一番の難関は買い物をするときかな。ココロが千円札を持つのは初めてだし、スタンプカードを出すことを忘れないことも大事。  ケーキ屋さんのスタンプカードは、10個のスタンプを押すと500円券として使える。1000円以上の買い物につきスタンプ1つを押してもらえるから、忘れては駄目と前に言ったけど、覚えているかな。  そんなことを考えていたらココロは立ち止った。目の前の信号機が赤になっているようだ。でも一向に歩行者用信号のボタンを押さない。この道は交通量が多めだけど、その合間を縫って赤信号を渡るつもりかな。もしそうなら叱らなきゃ…  娘が待つ間も、車は忙しそうに道を通り抜けていく。複数の車が通り抜けると、車の切れ目ができた。  さあ、ココロどうする?  ところが、彼女は微動だにしない。
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