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再び車が通過し始めた。何でココロは道を渡らないのかな。
数分ほど経ったころ、ココロは辺りをキョロキョロと見回し始めた。いつまでも信号機が変わらないのがおかしいと思い始めたんだね。
だからココロ、脇の電柱にあるボタンを押せばいいの。パネルにおしてくださいって書いてあるでしょ。大体この道は通学の時にいつも…
そうだった。通学の時は他の子供たちと一緒に登校しているし、シルバー人材の人たちが旗を持って立っていてくれるんだったね。
一体、いつ気づくのかな。ここからだとココロの後姿しか見えないけど、落ち着きなく手足を動かしている。ひょっとしたら焦って車の前に飛び出してしまうかもしれない。でも、中断させるのも、お使いに挑戦したココロに水を差す気がするし、別の道を探したり、引き返す可能性もある。
ココロがキョロキョロしていると、目の前に主婦のような身なりの人が歩いてきた。もしかしたら、そのまま止まって…
いや、ココロをちらっと見たけれど、そのまま通り過ぎて行ってしまった。
ああ、残念だったねココロ。その言葉が口から出ようとした時…
――ギギーー!
ブレーキ音が響いた。正面に視線を戻すと、鉄の塊のような大型のトラックがココロの横に迫ってくる。
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