<第二話・先輩の役目>

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「まあ、お前がバニラアイス好きなのはわかってるけどな。バニラアイスが乗ってるメニューって他にもあるだろ?」  つんつん、と限定メニュー表をつつきながら言う英知。 「で、今日は俺が奢るって言ってて、後輩が一緒ってわけだ。風見は遠慮しないタイプだからいいとして、それ以外の後輩はどうしても気を使っちまうんだよなぁ。俺相手に、もそうだが。まずお前に気を使うだろうさ」 「俺に?」 「そう。早い話、お前より高いメニューはちょいと頼みづらくなると思わないか?お前が頼んだバニラアイスは美味しいかもだけど、デザートメニューの中だと他の単品アイスと並んで一番安いだろ」 「あ……」  その発想は、なかった。彼が何故、頼む前から“もっと高くてもいいんだぞ”と言っていたのかをやっと理解する。遠慮しないし容赦もしない、空気も基本読まない、なんて大物な中一は亮馬くらいなものだ。確かに、それこそ同じ一年生の不知火響也であったなら、萎縮してデザートどころかコーヒー一杯で済ましてしまおうとするかもしれない。彼はそういうところで生真面目過ぎるからだ。  だが、彼等より一個年上の自分が、多少遠慮を抜きにして高めのメニューを選べば。当然後輩たちもハードルが下がるというもの。もう少し値段を気にせず、好きなものを選ぼうとすることもできるかもしれなかった。 「……すみません、俺全然そういうところに気付いてませんでした。さすがキャプテンですね、みんなのそういう傾向とかちゃんと見てるんだなぁ……」  素直に感嘆して、息を漏らす。自分はまだまだだ、と改めて思い知らされる。そして多分、これもまた彼の指導の一つであるのだと。 「大したことじゃないさ。ただ、お前はちょっと真面目すぎるし、セオリーに囚われすぎるところがあるからな。それがサッカーのプレイや、みんなとの接し方にも出ちゃってると感じることもあるわけだ。お前が頑張ってることはみんな分かってるだろうけど、一年生達とはどうしても壁があるというか。お前は他の二年生と比べて話し掛けづらい空気がある。俺ら三年は先輩だからまだいいが、一年生は遠慮があるから余計にな」 「堅物そうに見えるってことでしょうか」 「それもなくもないかな。俺みたいにジョークを飛ばせとは言わないが、もう少しみんなとコミュニケーション取ってもいいと思うぞ。それが無理ってんなら無理強いしないが、お前の場合は“みんなと話したいし気になる話題もあるのに、自分なんかが入っていって空気を壊さない自信がない”で一歩引いてるところがあるだろ。だから、一年生とかは“ゲームやアニメの話はキャプテンとはできなさそう、そういうものが好きじゃなさそう”って多分思われてるぞ。折原は、感情を誤魔化そうとすると能面みたいな無表情になるしなぁ」  驚嘆。その一言に尽きた。思わずまじまじと英知の顔を見てしまう操である。
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