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<第一話・遥かなる道程>
蹴りあげたボールは、そのまま誰もいない場所にぽつんと落ちて――ころころと転がっていく。やっちまった、そう思って折原操は頭を抱えた。
完全に目測を誤った結果だ。パスをしようとした後輩はまるっきり追いつけていない。
「あっちゃ……」
「気にしないでください先輩、俺が取ってきますんで」
苦笑気味にそう言ってパタパタと駆けて行ったのは、星ヶ丘中サッカー部の、我らが期待の一年生ストライカーである。高いサッカー技術を持っているというのに、まるで気取る様子のない彼は名前を“不知火響也”という。ややウェーブした艶やかな黒髪が遠ざかっていくのを見ながら、ありがと、と返すしかない操だ。
サッカーのポジションは数多くあれど、個人的にはミッドフィールダーに求められる仕事量は相当なものだと感じている。操はこのサッカー部の二年生。ただのミッドフィールダーではなく、次期キャプテン及び次期司令塔に指名された人間でもあった。実力はあるものの曲者揃いのサッカー部のメンバーを今年こそ全国大会に連れていくのが自分の役目だと真剣に思っている。なんといっても、今年は響也を始め本当に粒ぞろいの一年生が揃っているのだ。
――パス、全然うまくいかないな。響也は足速いけど、そもそもアイコンタクト失敗してちゃ意味ないし、あれ全然違う方向に走りかけてたよなどう見ても。
どうしたもんだろうか。早いところ、解決しなければならない大事な件だ。いくら操が、中学からサッカーを始めたからといっても、それでも一年は過ぎているのである。皆からも相応に期待されているのはわかっているし、だから今のキャプテンに指名された時に監督もコーチも反対しなかったのだろう。
彼らの願いに、自分は全力で応えなければいけない。後一歩で全国に行けなかった去年の無念は、今年の頑張りで晴らすしかないのである。
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