名作「刺木ケ窪で三角関係」

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名作「刺木ケ窪で三角関係」

【ストーリー】  衣利以(えりい)は親友の絵麻(えま)と大阪・※刺木ケ窪(いらきがくぼ)のマンションでルームシェアしている。 ※刺木ケ窪とは、かつて刺草(いらくさ)のような棘のある刺木(いらき)が群生していた北摂 (ほくせつ)地方にある低地。土地が痩せているため農地には向かず、戦前まではただの荒れ地だった。  戦後、大阪大学・大阪教育大学・関西大学の学生寮・下宿屋・研究者のための単身者用アパートを中心に宅地造成が進み、独自の若者文化が発展した。東京の高円寺のようなイメージの町である(嘘)。  さて衣利以は同じサークルの譲治 (じょうじ)に秘かに想いを寄せていたのだが、親友の絵麻も彼に恋していることを知り、自らの恋を封印してしまった。絵麻との友情を壊したくなかったのだ。だが、譲治も……、衣利以に恋をしていたのだ。  以前は親しく話す仲だったのに、彼女はこの頃ずいぶんよそよそしい。僕は嫌われてしまったのか?   譲治は、衣利以が絵麻と暮らしているマンションを訪ねて行く。 「で、僕が嫌いなのか?」 「そんなこと聞かないでよ。中に絵麻がいるのよ?」  譲治、衣利以にキス。 「ダメじゃないの……」 「好きなんだ! 君でなきゃダメなんだ」 【回文】 「で、僕が嫌いやのんかぁ?」 「問いなや。絵麻おんねや」  キス。 「アカンやんかぁ……」 「好きやねん! お前やないとアカンのや」  刺木ケ窪で。 【書き下し文】  で、ぼくがキライやのんかぁ? といなや、エマおんねや。キス。アカンやんかぁ……。すきやねん! オマエやないとアカンのや。いらきがくぼで。
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